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Skyraider
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05.03.09:19

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  • 05/03/09:19

12.23.15:12

無題

クリアしたので支部にもあげたSS一本。

ファンアートを今日明日で描きたい。
いやぁ、楽しかったです…!
詳しい感想はまた後日で。

SSは続きから。微妙にネタばれているような、ないような。

いつの事かと聞かれたら、ネオン・スカラに銀貨三十枚の値がついてから
一年以上たった後の事だと答えよう。
曖昧な答えではあるけれど、ある種の平穏、ルーチンの範疇内、と言えなくもない日々であるのだから十分なはずだ。

朝。
薄曇りと本来は言われるのだろう、白い晴れた空。
明るんだ外を認識するより先に、聞きなれたオルゴールの音を拾って
ネオンの意識は浮上した。
「…ん…」
もぞり。
布団の中から手を伸ばして、目覚まし時計のスイッチを切る。
二重式だから、横側にも手を伸ばしてもう一度。
襲う眠気にまた仲良くしかけた瞼を押し開くように目を擦って、ネオン・スカラは起床した。
時計を見ると、きちんと午前六時半の表示。
問題はない。遅刻もなし。
ベッドから降りると、ひやりと床の冷たい感触が足裏に伝わって
彼女はふるりと身を震わせた。


身支度を整えて、白いエプロンをつけて階下に降りる。
するとそこには見慣れた姿があった。
見慣れないはずがない。
途中幾らか離れたことはあったにせよ、四つの季節を共に過ごせば
誰だって慣れるというものだ。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
声をかけるより先に、広いソファーに腰かけ目を通していた新聞から顔を上げてこちらを見た
ニコラ・テスラに挨拶をすると、彼の目がほんの少し細められた気がした。
あくまで気がした、だ。
新聞が邪魔で良く見えなかった。
今日は第三新聞、タブロイドでなく第一新聞を広げているようで
肌色が目に入ってくることもない。

今日は、良い日かも。

彼と己の関係性を語るよりも先に、年頃の娘であるネオンとしては
あまりおおっぴらにそういうものを見たいわけではなく、そうでなかったことになんとなく気分を上向かせる。
「それじゃ、朝ご飯作ってきますね」
「頼む。今日はフーゼレークは」
「ないです。昨日も一昨日も食べたじゃないですか」
ばさっと一刀両断する。
彼はフーゼレークがよほど好きらしくことあるごとに強請ってくるが
その要望に応えて昨日も一昨日も作ったのだ。
さすがに今日も、というのは勘弁してほしい。
毎日同じ献立では作り甲斐がないし、ネオンが食べ飽きてしまう。
むぅっという顔をする(表情が変わらないながらもしたような気がした)テスラを置いて、ネオンは厨房へと立ち去った。

煮込み料理は昨日のうちに仕込みを終わらせてあるし、忙しくするのは少しの時間だけだ。
凄い量の朝食を作ることに慣れたのは、とうの昔だ。
ぐつぐつと煮込み料理が立てる音を聞きながら、トルテの焼ける甘いにおいを吸い込む。
「良い匂い。今日、いつもより上手く出来たかも」
ひっそり、今日の甘味に自信を持ちながら、鍋の中身が焦げ付かないよう
底を掬うようにしながら鍋の中身をかき混ぜる。
そうすると、ふわりと今度は香辛料の混じった香りが鼻腔を擽った。
食欲をそそる良い匂い。
前に店が出せるとテスラに言われたことがあった。
それは流石に言いすぎだとは思うけど、このキッチンに立ち始めたころよりかは
腕前は上がったような気は確かに。

でも、毎日欠かさず大量の料理を作っていればね。

むしろ腕が上がらないほうがおかしいというものだ。
くるくるくるくる。
中身をかき混ぜ、鍋に渦を作りながら一人納得していると後ろからがさりという音がした。
「前から言おうと思っていたんですが、お行儀、悪いですよ?それ」
「気にするな」
誰がいるかなど分かりきっている。
くるっと振り向いて首を傾げながら注意したネオンに、新聞を広げたままテスラが肩をすくめた。
なにが気にするな、なのかは分からない。
ネオンの注意に対しての返答にすらなってないと思うし。
それでも彼は平然としたまま厨房の柱に背を預け、新聞をがさっと広げた姿のままそこに居る。
大人しく座っていればいいのにとネオンは思うのだが
どうしてかテスラは朝食の準備中、厨房に良く現れる。
その度に、ラジオを聞いていればどうか。新聞を読んでいたらどうか。と勧めては
厨房から追い払うのだけど、どうしてか懲りない。
不思議、と首を傾げた瞬間に、ふと懐かしい記憶が頭を掠めた。
懐かしい故郷に居た頃、ブランカがふと傍に寄ってくる時があった。
そしてそれは大抵―――
「……………ふふっ」
ネオンは微かに声を絶てて笑った。
下らない思い付きだ。
多分違うだろう。
でも、そう思ったらなんだか少し、面白くなってしまった。
そうではないだろうけど、もしもそうなら少しだけ、ちょっとだけ、かわいいかもしれない。
「なんだ、何かおかしいことでもあったのか」
「いいえ、なんでも。テスラ」
新聞をたたんで不思議そうな声をあげたテスラに首を振って見せて、ネオンは彼の名を呼んで
煮込み料理を小皿に少しだけとって彼の方に差し出してみる。
「味見、しますか?」
「珍しいな」
「たまにはいいかな、と思ったんです。もうすぐ出来ますけどけど…します?」
「ふむ」
誤魔化し半分、機嫌が良いの半分。
微笑みながらネオンが差し出した小皿をテスラは暫く見ていたが
手を伸ばして口を付け、うまい、と一言感想を漏らした。


なんでもない、とある朝の事。


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